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スター・トレック
ネメシス

※以下では『スター・トレック:ネメシス』のネタバレ要素を含んでいます。閲覧の際はご注意ください

映画 ポスター Lサイズ スタートレック 【STAR TREK NEMESIS】

―――作品の見どころ―――

『スター・トレック ネメシス(S.T.X.)』(以下、「ネメシス」)の見どころは、TOSのクリンゴンと並ぶ宿敵ロミュラン帝国との和平への予感を感じさせる物語だ。謎の国とも称される不気味なロミュランの政変をめぐる陰謀と一人の男の怨嗟に立ち向かうピカード艦長の活躍に注目だ。
 さらにピカードの前に立ちふさがる敵として、彼のクローンであるシンゾンの存在からも目が離せない。

―――シンゾン―――

 まずネメシスというタイトルに関して少し考えてみよう。ネメシスは復讐の女神(正確には義憤という意味に近いらしい)の名であり、また、SFファンや宇宙に興味がある方ならご存知だろうが、仮想の星で過去地球で起こった大量絶滅の遠因になったとされる太陽の伴星の名でもある。ピカードのクローンで、復讐に燃え、地球を滅ぼさんとするシンゾンを表現する名前としては非常にしっくりくるものだ。
 だが、シンゾンのキャラクターは最大の敵としてはしっくりこない。彼はロミュランの陰謀の為に作られたピカードのクローンであるが、ピカードの年齢に合わせるために無理な老化をもたらす遺伝子操作を受けた影響で遺伝子が崩壊し、死を迎えつつあるというキャラクターだ。

 まず第一の問題として放っておいても死ぬキャラクターを最大の敵に持ってくるのは果たしてどうだろうか?確かに死に追い詰められた人間の凄みはあるかもしれないが、やはりピカードのような主人公よりも敵が追い込まれている状況は物語の緊迫感という点において一段劣るよう思われる(ピカードが死に追い詰められるのは最終盤くらい)。どうせなら一旦シンゾンを救ってしまって、それでもなおピカードを殺そうとする救いようのない悪として表現した方が凄みがあったように思うのだが…

 もうひとつ、ロミュランとピカードに対して復讐心と劣等感を抱くのは分かるが、なぜそこまで地球破壊にこだわるのかがよく分からない。シンゾンがピカードのクローンである自分が地球を破壊することによってピカードを苦しめようとするという意図は分かるのだが、いよいよシンゾンに死が迫ってきても「死を賭してもなすべきことがある」と地球の破壊を至上の目的としているのだ。地球破壊はあくまでピカードを苦しめる手段であり、目的ではない。このせいでシンゾンの真の目的がぼやけてしまっているような気がする。

―――データの死―――

 この物語の最大のインパクトは人気キャラであるデータ少佐の死だ。似たような展開としてカーンの逆襲のスポックの死があるが、この二つは似て非なるもののように思える。
 まず、スポックの死との違いは、あまりにデータの死の伏線を張りすぎているということだ。自らのプロトタイプであるB-4の登場、さらにはB-4に自分の記憶のコピーしてしまうなど、俗な言い方をすれば死亡フラグが立ちまくりな状態であり、クライマックスでの彼の死が容易に予測できてしまう。
 さらに、B-4にデータの記憶を映したことで復活の伏線をかなり分かりやすい形で出してしまったこともスポックの死とは大きく異なる。実際、彼は2009年版『スター・トレック』の前日談であるコミック版でデータとして復活している。

 「カーンの逆襲」で、監督のメイヤーは絶対に生き返らせないという前提でスポックの死を描いたことに対し、「ネメシス」におけるデータの死は色々伏線を張りすぎてしまっている。そのため非常に打算的にも思えてしまい、結果的にはお涙ちょうだい的な印象がぬぐえなかった。

―――総評―――

 この作品を監督したのは『スーパーマン』(1978)などの映画編集者としても著名なスチュアート・ベアード。彼の映像の選び方や演出に関しては、率直に言うと従来の『スター・トレック』シリーズとは合っていないように思う。
 気になるのはスローモーションの多用だ。アクション的な雰囲気を出したいのは分かるが、爆発の度にスローモーション、車が宙を飛べばスローモーション、挙句、レムスの副長官が鉄柵を飛び越える“だけ”のシーンにおいてもスローモーションとやりすぎな感じだ。
 もう一つやりすぎと言えば、マニアを意識してのことかフェイザー打つたびに手元のカットイン、操船する際も手元のカットインと一々「○○をする度どのボタンを押したか」を映す点だ。最初の一度だけならともかく、毎回毎回これではテンポが悪くなってしまう。

 ただ、前面に打ち出していた艦対艦のシーンに関しては、スピード感をそれなりに維持したまま程よく重厚に仕上げておりシリーズの中でもよく出来た方の映像であることは間違いない。特にエンタープライズのブリッジにレムス戦艦シミターのディスラプターキャノンが直撃し宇宙空間にあらわになるシーンや、エンタープライズの体当たり攻撃などは今までのスタートレック作品ではなかなか見られない映像である。

 全体的には前半の退屈さとまとまりのなさがかなり大きなマイナスかもしれない。オープニングはともかく、ライカーとトロイの婚前パーティーなどはファン以外にはピンとこないだろうし、ファンであっても今更と感じることもあるだろう。ピカードも前半はかなり浮ついた態度で(辺境惑星の原住民に見つかって武装トラックで追い回されるシーンなどはピカードらしからぬうかつさである)、何か空回りしている印象がぬぐえない。後半の出来は決して悪くないだけにこの点は非常に残念だ。

 「ネメシス」は今ではTNG劇場作品の完結作で確定しているが公開当時はまだ流動的な状況だった。それなりにヒットすれば続編の可能性もあったが興業的には失敗。TNG劇場作品は本作で途切れた。
 ただ、現実問題としてTNG劇場シリーズはすでに限界を迎えていたように思える。TOS劇場版のように仕切り直しが無く、TVシリーズ直後から劇場展開したのだから無理もないかもしれない。シリーズ自体の長期化によるマンネリ化は前作「叛乱」からも薄々感じられたし、出演者の高齢化というどうにも解決しようがない問題を抱えていたのも事実だろう。

 さて、映画そのものの評価とは少し離れるが、この作品を見るときはリマスター版より、レンタルでもよいので特典に削除シーンがあるバージョンのものを見るといいかもしれない。こちらには幻の新副長マッデン中佐など面白い映像が収録されているからだ。

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